男性A |
「ご住職、私は、今年還暦を迎えます。私の家も浄土真宗ですが、子どもの頃は、おばあちゃんに手を引かれて御法座によく参らされたものです。しかし、お寺に参っていたのは、その頃だけで、この歳になって、何にも分からない自分が恥ずかしく思います。お寺に参って、お聴聞していてもさっぱり分かりません。」 |
男性B |
「私も浄土真宗ですが、お経というのは、本当に訳が分かりません。漢字ばかり並べられても意味が通じるはずがありません。お経の現代語訳とかは、ないんですか?」 |
住職 |
「ご本山から、お経の現代語訳は出版されていますが、現代語訳を読んでも、お経の意味は分かりませんよ。」 |
男性B |
「現代語訳なら、私にも理解できると思いますが・・・」 |
住職 |
「字面は理解できましても、その言葉に込められた深い意味は分からないでしょう。しかし、分からないのが当たり前です。仏様が説かれたものが、すんなり分かったら、それは仏様です。私どもに分からないのは当たり前です。しかし、分からないままで、ご法座に座り続けることが何よりも大切ですよ。その内、阿弥陀様の声が響いてくるときが、必ずやってきます。」 |
男性A |
「うん、そうなんでしょうね。また、お寺に参ります。」 |
男性B |
「う〜ん、響いてくる、ですか・・・」 |